「米国における環境配慮型ファッションの動向」

廃棄物資源循環学会誌 2010年5月 Vol.21 No.3

haikibutsu 201005

(冒頭一部ご紹介)

米国における環境配慮型ファッションの動向
田中めぐみ

【要旨】
環境配慮型ファッションにおいて先行する米国の動向と欧米事例、環境配慮型ファッションの概要をまとめた。エコファッションの起源ともされる1960-70年代のヒッピーファッション、90年代の米アパレル・小売企業の環境・社会問題への目覚め、そして2000年代半ばに入りこれまでのエコファッションのイメージを覆すセンスの良い環境配慮型ファッションが登場し、さらに環境のみならず社会問題までを含んだサステナブルファッションが価格の高低問わずファッション業界全体に浸透するまで、時系列で米国サステナブルファッションの歴史と動向を追った。また、サステナブルファッションが抱える課題と日本のファッション業界が今後進むべき道を簡単に記した。

キーワード: 米国、エコ、サステナブル、グリーン、ファッション

  1. 米国エコファッションの起源

1-1. ヒッピーファッション
米国におけるエコファッションの歴史は、1960-70年代に世界的なムーブメントとなったヒッピー文化に遡る。愛と平和を主唱し自然への回帰を望んだヒッピー達は、ファッションや音楽など生活スタイルを通して自らの主張を表現しようとした。コットンやヘンプなど天然素材製でタイダイなどの天然染色が施された服、アメリカ原住民スタイルのハンドメイドのジュエリー、平和の象徴であるピースマークや自然を表す花のモチーフといった、現在のサステナブルファッションの原型ともいえるヒッピーファッションが生まれた。しかし、自由を求めるあまり薬物乱用を肯定するなど抑制の効かない状態に陥り、薬物の取り締まり強化やベトナム戦争の終焉に伴いヒッピー文化は収束した。独特のヒッピーファッションもまた一過性の現象として、定着することはなかった。

1-2. 1990年代

その後、80年代後半頃から再び環境問題に対する意識が高まり始め、その影響はファッション業界にも及んだ。91年にはLevi’sが茶や緑系の自然な色が付いた綿花から採れるコットンを採用した無染色の「Levi’s Naturals」を発売した。同じ頃、Nikeは靴のリサイクルプログラムを開始し、90年代後半には揮発性有機化合物やPVCなど有害物質の使用を制限、97年にはオーガニックコットンの導入を開始するなど積極的に環境対策に取り組むようになった3)。96年には・・・